Mark33 Gun Director (Mark10 Range Keeper)

九一式高射装置より少々早い昭和7年頃より配備を開始した高射指揮装置。
方位盤と射撃盤、測距儀を動力台座上にまとめて配置した、オープントップの外見を持つ。

だが九一式と同じく、照準眼鏡と測距儀との連接を欠き、目標指示捕捉には苦労したという。
一体配置の利を生かし指揮官の絶叫とオーバーゼスチャーで問題解決を図ったが、当然ながら実戦において大変に苦労したようだ。

なにあれ激戦が続いた昭和17年代は、日米空母決戦における防空戦での、およそ主役として活躍した。
ただし、高速突入してくる日本海軍の雷撃機や急降下爆撃機相手に、信管〇秒!の弾幕射撃が精々だったとの説もある。

光学測距儀は12ftステレオ式。
おそらくツァイス式由来の、Bausch+Lomb社製遊標立体視式と思われる。

光学技術については、日米ともに戦間期までは程度の差こそあれ、およそ十分とは言い難い水準にあった。
欧州大戦での独逸敗戦に伴う光学技術者の異動によって、日米ともに開発加工技術の体系的獲得や、水準の向上を得られたようだ。

高度精密加工を必須とするステレオ式測距儀だが、その量産ともなれば米国メーカー群に利があったかもしれない。
ただし、製品そのものの性能や耐久性などの「デキ」については、管理人は知らない事ばかりである。

ちなみに、欧州大戦期に日本海軍が武式代替品として輸入した、Bausch+Lomb社製・6m測距儀(1916年製)については、
「最初こそ武式程度だが、すぐに曇ったり狂ったり云々」
「三四年で卸して仕舞云々」
などと、あまり芳しくない。
金剛型の主砲塔に試しに載せてみた測距儀のことであろうか?
ともあれ当時の日本海軍からすると、この時期の米バウシ社製品は、参考にするほど、褒めるほどの物ではなかった様だ。

射撃盤は Mark10 Range Keeper。
Ford Instrument社、自慢の一品である。
目標高度を算定しその平面上でのXY値を求めるもので、計算式を簡略化できる利点があり、水平爆撃機など水平直線飛行をする目標に適する。

この方式は、大英海軍HACS、日本陸軍九五式高射算定具ほか、多くの例が挙げられるものと思う。

この高度基準方式については、のちに高度可変に対応するよう改修された、との説がある。
またそうではなく、単純に距離速度を少々誤魔化すDiving target 機能をつけただけで、正当な三次元計算をしていないという説もある。
なお当サイトとしては、後者の説を重視している。

キーとなるデバイスの一つ、角度通信機セルシンのトルクがきわめて弱く、指示計器の針を振るのが精々であった。
このため計算機内部にあっても、計算結果の連絡のための継続的な監視操作を必要とし、操作人員の増加と運用性の悪さを招いた。
これは九一式と同様だ。

能力的には、目標捕捉から発砲まで「ウデの良いオペレーター」で、約30秒との説がある。
それに依るならば、一般論的にはそれを超える時間が必要になるのだろうか?

なお一部のMark33は昭和17年以降、上に屋根、前面にFD(Mark4)レーダーを装備し、なんとも趣のある外見となった。
艦によっては入渠時等にMark37に換装する場合もあったが、換装不可の艦はMark33のままで戦争を戦い続けた。

FDレーダーとMark33 Directorについて、空母エンタープライズによる南太平洋海戦の報告書では
「FDレーダーを装備して以来、ただの一度も敵を捉えていない」
「水平爆撃機に対する以外は、むしろ邪魔」
などと散々である。

昭和17年頃のエンタープライズの5in砲は、あるいはMark33を使わない砲側照準で、信管〇秒の弾幕射撃をこなしていたのかもしれない。



九四式高射装置

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