ズラリと並んだ戦艦部隊

昭和19年、マリアナ沖海戦。
日米5度目の、人類史上5度目の、いまのところ最後の空母決戦。

その戦いの一部。
米空母機動部隊の前衛の役割を果たした、第58任務部隊・第7群(戦艦部隊)のイメージである。

諸説あるが、大鳳以下空母9隻より出撃した攻撃隊のうち、米機動部隊輪形陣のいずれかに攻撃突入したもの、合計30~40機程度。
そのうちの19機が、対空砲火によって撃墜されたようである。

'44マリアナ沖海戦
      TG-58.7 戦艦部隊対空戦闘
※出典「太平洋海戦(3)決戦篇」(佐藤和正・著)掲載陣形図

中心に戦艦、一重の外周線には戦艦、巡洋艦、駆逐艦の合計22隻。
しかしこれ一列上に置くには、サイズやら操艦特性やらが異なりすぎるのではなかろうか。

ともあれ本図では、半径をやや緩めに7,000yd(約6,400m)、外周各艦の間隔を1,800m程度のイメージとした。

急降下する彗星は、外周の「戦艦サウスダコタ」に、理想的な降爆をするイメージである。(実際には不可能だったが)
有効射高付近から投弾まで約20~25秒程度。

むやみに大きい輪形陣での外周艦は、対空戦闘となれば実質的には"体の良い単縦陣"のようなものと見なせる。
本図においては、サウスダコタとその両隣の艦程度しか有効な射撃を行う見込が立たない。
ただし高射機4基、高角砲8基16門そして40ミリ機銃多数を擁するサウスダコタは、それ自体が暴力的存在ではある。

以上のような偏見じみた思い込みを伴いつつ、前出同様の撃墜確率計算をおこなう。

目標となるサウスダコタが基本確率0.2たらず。両隣の駆逐艦2隻(80%)がそれぞれ0.1未満。
単純な合計で0.4未満 (なんて馬鹿げた計算だ!)

先に"体の良い単縦陣"などと、見くびったような表現をしたのは、管理人の迂闊であった。
想像よりも強力な対空砲火が構成されるようだ。

つぎに。
低空を突撃する天山(紫色の破線)は、輪形陣中心への攻撃をイメージしている。

速度240ノット以上の全力。有効射程付近から魚雷投下まで所要約90秒程度。
外周線突破までは相当数の外周艦から、とにかく撃たれるだろうことは想像に難くない。
スラロームしながら高速低空突破の一手となるのだろうか?

ひとたび輪形陣内部に低空突入すると、今度は射線の干渉などで射撃が支障され、対空砲火が減少する瞬間があるかも知れない。
あるいは逆に、ややブロードな内側空間を利して、遠慮容赦のない十字砲火を受けることになるのか。

また、外周艦の位置間隔状況次第では、機銃射程をすり抜けられる形も発生するのではないだろうか。
とはいえ、これらはあくまでも状況次第。どうにも不明点が多い。

最終的にインディアナの40mm機銃に捉まるだろう。そこから魚雷投下までさらに5~6秒程度。
その何秒間かに、その時点で射撃可能なおよそ全ての火力が指向されるはずだ。
投弾までは横滑りなどの回避技術と、火砕流の如き対空砲火との戦いとなろうか。

しかも魚雷命中のためには投下寸前に必ず姿勢針路を安定させる必要があり、それ自体が被弾の原因とも思えてくる。
また仮に、正しく投下したとしてもその後無事退避できるとはとても考えられず、管理人はなんとも切ない想いでこれを書いている。



レイテ沖の緊密隊形

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