3インチ50口径速射砲

存速と飛翔時間

推定命中率と命中帯

対空戦闘のイメージ


3インチ砲弾は、近接信管の装着が可能な当時最小の砲弾。(炸薬を減らした専用弾)
この近接信管装着砲弾を、消火栓の奔流の如く吐き出すように仕立てたのが、3インチ速射砲 "KAMIKAZE KILLER" だ。

4,000yrd(約3,600m)以内において自由回避を行う敵機を、確実に撃墜するための速射砲である。
電探連動方位盤と近接信管を前提とし、実現可能な最大限の発射速度を以て目的を達成する。

これは、20mm、40mmを一挙に代替する、巨大な機銃システムである。
戦争には間に合わなかったが、戦後、長きにわたり多くの海軍艦艇にて、また海自艦艇にても活躍した。

砲弾存速と飛翔時間

要目
砲弾直径 76.2mm
砲弾重量 5.9㎏ (炸薬量:VT対空弾240g:通常榴弾340g)
砲口初速 823m/s
発射速度 約40~52発/min
射撃指揮 Mark63方位盤ほか

3in速射砲 存速と飛翔時間

青色の実線「必中を期する射程」が2,800m程度。
緑色の実線「対空有効射程」が3,500m程度。

この存速図によれば、3,600m以内云々の要求を概ね満たしていることになる。



3in速射砲存速比較 長8cm高角砲存速比較

長8cm砲との比較。
単純な線図の見た目だけならば、長8cmが優位となる傾向が見て取れる。



推定命中率と命中帯

3in速射砲 推定命中率

そこらの機銃弾とは比較にならぬ重量弾であることから、実に良く伸びた曲線となった。どこまでも当たりそうな雰囲気である。

3in速射砲 命中帯

対空戦闘必中射程として約960m。対空戦闘有効射程として約1,800m超となった。
当たり前だろうが40mm機銃よりも、有効射程が長いことがわかる。
ただし弾道高さ2mの必中射程としては、25ミリも40mmも3inも、似たり寄ったりということも判明した。



対空戦闘のイメージ

本砲の開発完了によるトライアルが昭和20年秋に行われ、高評価を得たという。

【良い評価】電探連動方位盤発射、近接信管使用の3インチ単装速射砲は、40mm連装機銃、状況によっては四連装機銃にも勝る。

【悪い評価】ただし電探連動方位盤または近接信管のいずれか、あるいは両方を欠く場合は、40mm連装機銃に劣る。

ずいぶん極端な評価である。これは如何なることか?
当サイトなりにこれを検証する。

3インチ速射砲対空戦闘

緑色の実線が【1】電探連動方位盤、近接信管使用による、対空戦闘有効射程であ る。
これは弾着すべき時空間を方位盤で精確に決め打ちする、つまりは高角砲の運用そのものだ。

本図においては推定命中率30%に相当する距離として、約3,300mとした。 (30%云々は、既出25mm機銃の例に倣う)
この距離が多少前後しようがしまいが、間違いなく40mm機銃の射程を超越している。
テキがまっすぐ突っ込んで来ようものなら、電波測距、近接信管と弾量で粉砕してしまうだろう。

一方、橙色の実線が【2】に相当する、電探または近接信管を欠いた状態である。
これは簡易方位盤で未来位置の見当をつけ最大限の火力を流し込む運用だ。
つまり"Mark51GFCS+40mm機銃"とおよそ同じ状態になる。

よって、これまでの機銃の各項同様に、「対空戦闘有効射程」"命中帯長さ100m"を適用する。

並べると、下図の様になる。
3in速射砲 砲側照準 ボフォース40mm機銃 砲側照準

本図においては有効射程約1,800m、有効射高1,500m程度となった。

40mm機銃に対して、有効射程は100mほど上回るが、そこで稼げる時空間は1秒程度。
一方で発射速度は、40mm連装の200~240発/minに対して、3in単装砲は約40~50発/minである。

投弾まで7秒と仮定すると、推測される発射弾数は40mm連装が22~28発。対する3in単装は4~6発だ。
いや威力の差が!と思われるかもしれないが、それは直撃弾あってのハナシだ。まず当てなければ是非もない。

となれば、まずは弾数を出せるほうが、実戦環境下では(兵員の精神衛生的にも)有利となるように思われる。
ただしカタログ的には共に、推定命中率60%超であり、要するに「よく当たりそう」な範囲では、ある。

ともあれ結論。

【当サイトで考える悪い評価】
電探連動方位盤がないと、40mm機銃に明確に、あるいは少々劣るかもしれない。
一方で近接信管だけ使える場合は、VTAA弾の危害半径約9mを含んで有効射程2,000m程度が楽観され、その場合40mm機銃に少々勝るか も。

以上が、当サイトの見立てである。


余談。

かつて3吋だの40mmだのの砲手をしていた頃もあったなぁ、と懐かしむオトコマエよりお聞きした昔話。
(およそ弾込めばかりしていたらしい)

「水平線にちょっと(飛行機?)見えたと思ったら、あっという間に頭の上を通り過ぎる」
「数えればそりゃ何十秒かもしれんけど、でもあっという間だ」
「こんなテッポーで間に合うのかと」

対空戦闘というものは、やはり大いなる難事業なのだと改めて思ったものである。

余談終了。


高射射撃指揮装置

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