25mm機銃

存速と飛翔時間

命中率のための前奏

推定命中率を推定する

対空戦闘のイメージ


「射程ガー」「威力ガー」「命中精度ガー」「装弾数ガー」「俯仰と旋回ガー」「四十粍ガー」

何かと議論の多い。
でもみんな大好き25ミリ
そんな九六式二十五粍機銃を、まずは砲弾存速の観点から考察する。

砲弾存速と飛翔時間

要目
砲弾直径 25mm
砲弾重量 250g (炸薬量10g)
砲口初速 900m/s
発射速度 230発/min (箱型弾倉15発)(射撃速度 約150発/min)
砲架形式 連装・三連装・単装
射撃指揮 九五式機銃射撃装置

25mm機銃
      存速と飛翔時間

青色の実線(砲弾存速マッハ1.5超)
砲弾存速が安定的な超音速領域にあり、飛翔状態が概ね安定していると考える領域。
仮に「必中を期する領域」とする。
本図においては、約1,400m程度

緑色の実線(砲弾存速マッハ1.3超)
砲弾存速が超音速から遷音速に遷移しつつあるものの、飛翔状態が比較的安定していると考える領域。
仮に「対空有効射程」とする。
発射点からここまでを「妥当な確率で命中を期待する範囲」とする。
本図においては、約1,700m程度。

赤色の破線(砲弾存速マッハ1.1)
砲弾周囲環境が、不時不定かつ過激に変化する遷音速領域(マッハ1.3未満)であり、飛翔状態が最も不安定化すると考える領域。
黄色実線から赤色破線までの間を「不安定化領域」、そして赤色破線を「音速の壁」とみなす。
つまり赤色破線よりも右側の領域は、砲弾存速が音速未満となる。
本図においては、およそ2,100m程度。

当サイトではこの「不安定領域」を、対空射撃において「命中をあまり期待できなくなる範囲」。
また「亜音速領域」を「射撃効果をおよそ期待せざる領域」と考えるのである。

まずは高角砲の部と同様の手法で評価を行ったが、なんだか一般論よりも少々高性能寄りな感じになった。



命中率のための前奏

25ミリ機銃については近年、対空有効射程1,500mという数字がおよそ実証値として徹底しており、全く議論の余地はない。
しかし本図では、対空有効射程1,700mとの数字が出た。
この結構な差異を、当サイトにおいてどのように解釈すればよいのか?

大掛かりな射撃指揮装置および、大威力の榴弾と時限信管(あるいは近接信管)を用いる高角砲と違い、
機銃は簡易方位盤に従動し、基本的には銃弾多数(←コレ大切!)を敵機に直撃させてようやく威力を発揮する。

とすれば、肝心なのは直撃弾のための命中率か?

そこで機銃命中率などの調査を始めたが、出てくる答えはこれ要するに
「ヒコーキに向けてタマ撃っても、世間様で思っている ほどには中らんのよ」
となる。

なるほど現代的な電探連動デジタル方位盤+クオーツ式時限信管+砲口調定システムを以てしても、「理想で2%」という意見もある。
繰り返すが「理想」である。

1930年代から1940年代ならば、「訓練で」命中率1%未満が、およそ相場のようだ。
"以下"ではなく"未満"である。
なおこの"未満"には、「約0%」も含まれている。

また別の問題として、サイズ(断面積)も重量もそれなりの高角砲弾に対して、機銃弾はサイズの割りにずいぶん軽量だ。

一例として12.7cm高角砲弾と25mm弾ならば、重量で約94倍も違うが、断面積は約26倍程度と、重量ほどの差異がない。
重量密度的に考えるなら、スカスカといっても構わないだろう。
飛翔環境の変化に、より敏感となり、より不安定化しやすいのでは?と考えるのだ。

ともあれ、様々調査の末に、以下の数値を伴う内容を得ることができた。
当サイトでここまで(エラソーに)講釈を垂れてきたことが、最後のわずか一行で無事解決である。

ハイ終了。

 ふりだしに戻る



推定命中率を推定する

いや、待て待て。

管理人もタダでは転びたくない。
この数値を応用すれば、かなり大雑把になるが命中率の推測が可能ではないのか?(あるいは憶測)

そこでエリコンによって示された数字を、当サイトの主張に沿って極めて強引な再解釈を施し、以下の図表を作成した。

25mm推定命中率

<注意:管理人は25ミリ機銃の具体的な命中精度を知らない>

2m四方の固定標的に対する推定命中率である。
当サイトの主旨ゆえ、この曲線は砲弾存速に全く依存している。
なお、10%未満については計算が破綻するため省略した。

現実世界においては、まず数値を10分の1とした上で、「命中率」とは呼ばずに、

「一連の射撃において命中弾を得る期待度」

くらいの概念で扱うことをお願いしたい。

さて。
次に機銃運用の実態として、測距(現在距離)は目測を主用するであろうと考え、命中距離との誤差を飲み込ませる要素として弾道高さに注目した。

 管理人は、九五式機銃射撃装置やMark51GFCSが、射距離調定が測距連動ではなく、およそ 目測での手動調定であると認識している。


25mm機銃
      戦闘照準

本図は、最大弾道高さを基準として、まっすぐに突っ込んでくる高さ2mの標的に命中可能な距離をイメージした図である。
例えば照準距離940mとすれば、0~940mの全域が命中域となる。
これを「対空戦闘必中射程」と定義する。
実運用的には照尺を1,000mとすれば、至近から1,000m程度までの全てをカバー可能となるように思う。

25mm命中距離検討

ちなみに、これが弾道高さ5m、命中距離1,330mとなると、1,190~1,330m(約140m間隔)となる。
敵機はこの140mの空間を、約1秒程度で通過してしまう。

さらに弾道高さ8m、命中距離1,590mとなると、1,510~1,590m(約80m間隔)となる。
敵機がコンマ数秒で通過する空間を、3秒以上も前に発射する銃弾で満たさなければならない。
ちなみにこの距離における推定命中率は約10%未満である。

これらをどう解釈すれば、機銃における有効射程算出の指標となるのだろうか?

そこで、もはや議論の余地がない「有効射程1,500m」に問題解決のヒントを求めた。


25mm機銃 命中帯
命中距離1,500mとして計算すると、命中帯が約1,400~1,500m(約100m間隔)となり、なんとも収まりが良い。
ちなみに砲弾飛翔時間は約2.4秒間、推定命中率約30%だ。

ともあれこの図に基づき、「命中帯長さ100m」を基準として「対空戦闘有効射程」と定義し、これ以降の話を進めてゆく。


対空戦闘のイメージ

25mm機銃 vs
      SBD急降下

約250ノットで急降下してくるダグラス艦爆との理想的な戦いをイメージしている。
突入してくるダグラス艦爆に対し、2,500m付近から撃ち始めれば、約4秒後およそ2,000m程度(音速限界)から命中し始める(かもしれな い)
引き金を引いたままに弾倉交換(目標所要2秒間)をすれば、各門装填次第発砲となり1,500m付近から命中し始める(ことを大いに期待する)
九五式機銃射撃装置に統制された三連装機銃一群(2~3基)で、ニ撃(180~270発)を撃ち込む目論見だ。

実に理想的、まったく理想的な段取りである。
実際そうは上手くいかないから大変な目に遭わせられるのだ。

なお有効射高は、的速220ノット連続5秒間として想定している。
本図においては、約1,100m程度。


25mm機銃 vs
      SB2C急降下

緩降下で高速接近してきたカーチス2形艦爆が機首を下げ急降下に転じた。
航空機はコースを曲げると、基本的に速度も変化する。
それまでに照準追尾されていた場合には、これを御破算にする効果もある。
針路を捻じ曲げながら急降下に移行してゆくことで、飛行軌跡のベクトルを変化させ続けることになり、それは照準追尾を一層困難とするだろう。

ここでは平均270ノットとしたが、緩降下として300ノットを大きく超える高速で突入してくる場合も多くあったようだ。
この様な高速飛行は、射程範囲内での滞空時間を短縮し、照準追尾、射撃命中をより困難とするものだ。

少々楽観的な本図であっても、このカーチス2形艦爆は有効射程内に入って7秒以内に投弾する。
第一撃はともかく、第二撃をかけるのは困難だろう。
一機銃群にての理想発射弾数90~135発。これが多いか少ないか。

さらに、的の速度が上がるに従い、命中期待度はさらに低下する。
贔屓目に見てもなお、極めて苦しい戦いとなるだろうことが、本図より窺える。

なお海軍では25ミリ機銃の撃墜可能範囲を、距離2,000m以内、高度1,000m以下と評価していたようだ。



毘式四十粍 機銃

HOME


ALL COPYRIGHTS RESERVED by 対空一考

inserted by FC2 system